工場の自動化で製造が変わる!ファクトリーオートメーションとは
ファクトリーオートメーション(FA)とは、工場内の生産工程を自動化するためのプロセスや、そのためのシステムのことです。
主な目的は、ロボットやセンサー、測定器、制御装置などの機械と情報システムで作業を一体化し、人によって行なっていた作業を省人化・省力化することです。
ここでは、ファクトリーオートメーション(FA)導入におけるメリットや歴史、具体的なシステムや機器について紹介していきます。
ファクトリーオートメーション(FA)を導入する企業が増えている理由
工場にファクトリーオートメーション(FA)を導入することにより、作業の機械化が進むと、大量生産による生産効率向上や人件費などのコスト削減につながることは明らかです。
ロボットやAI、IoTによる「人を超えた緻密な作業」「24時間体制の工場の稼働」「柔軟に転換可能な製造ライン」などが、企業が目指すファクトリーオートメーション(FA)の役割です。
現在の製造業が目指すところは、コストや効率化にとどまらず、より高度な製品に対応するための品質向上や柔軟な製造工程システムの構築へと移っています。
ファクトリーオートメーション(英: Factory Automation)とは、工場における生産工程の自動化を図るシステムのこと。FA(エフ・エー)と略される。日本では実用化の初期にオートメと略称されていた。
ファクトリーオートメーション(FA)を導入するメリット
これまでの製造業では、人による手作業が中心だったことから、不良品の発生や異物の混入事故、作業工程でのミスやばらつき、生産速度の不安定などが避けられませんでした。
ファクトリーオートメーションでは、人に替わって機械がワークの状態を判断、情報を伝達、制御、製作、組み立て、計測、判別、充填、印字、搬送など、あらゆる工程を自動化することで、さまざまなメリットをもたらします。
人手不足の解消
人の作業を機械が替わって行うことは、省人化・省力化による人件費の削減、また、作業する人への教育にかかるコストの削減にもつながります。
また、人の作業軽減により、その人員をほかの重要な作業に配置することができます。
さらに、将来ますます進む少子高齢化を見据え、人手不足を解消するための投資という見方も広がりつつあります。
生産効率の向上
ロボットは、長時間の作業においてもスピードや作業性に変動がなく、計画どおりの生産が可能です。
また、人間とは異なり長時間連続して稼働できることで、工場の24時間フル活用が可能になり、格段に生産効率が向上するだけでなく、生産サイクルが短縮するという大きなメリットもあります。
作業の環境改善
工場の問題には、製造の特性により高温や低温、騒音、重量物の搬送など、作業において人に負担を強いる環境があります。
ファクトリーオートメーションの導入は、このような条件下で人と機械の作業を分担し作業環境の改善につながるというメリットもあります。
ファクトリーオートメーション(FA)の歴史
工場のオートメーション化は、1950年代中盤アメリカで、主に製鉄産業が先駆けになったとされています。
この時代の製鉄産業は軍事需要が盛んで、大量生産のための近代化が一気に加速しました。
生産は工作機械による圧延や鋳造などの機械作業の工程を連続化する仕組みで行われ、その後、自動車などの一般的な産業にもオートメーション化が浸透していきました。
1970年以降
計測器などの装置のデジタル化が進み、工作機械の数値制御やコンピュータ化、さらにセンサ機器も発達し、高精度な技術が組み込まれるようになりました。
1990年頃
制御システムがより高度化し適用範囲が大幅に拡大、「FAコンピュータ」から「産業コンピュータ」へと変わり、マルチタスクが可能になりました。
2000年以降
ITを駆使した自動制御システムで、情報・ネットワーク・制御が一体化したファクトリーオートメーション(FA)システムの確立へと進みました。
ファクトリーオートメーション(FA)の用語解説
ファクトリーオートメーション(FA)では、工場内の生産工程に適応した機械を配置し、さらに作業特性によってさまざまな種類の装置を組み合わせてシステムを構築します。
ここでは、ファクトリーオートメーション(FA)に関わる専門的な用語について解説します。
フィールドネットワーク
フィールドネットワークとは、集約した上位のパソコンやサーバから、PLCなどのコントーラと、作業を監視するセンサや測定器、位置決めなどに使用するサーボモータなどの駆動機器を接続して制御するためのネットワークです。
PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)
PLCとは、プログラマブル・ロジック・コントローラ(programmable logic controller)の略で、一部ではシーケンサを示す場合もあります。
PLCは、リレー回路の代替装置として開発され、工場内の作業工程に応じ自動機械を制御する装置です。
NC
NCとは、数値制御(Numerical Control)により、機械を制御する方式です。
工場内の作業工程や工具の順番などを数値情報で制御し、工場内の作業をNCプログラム化することで、製造工程が自動化され、人の作業に比べ高い精度や作業の省力化を可能にします。
NC工作機械
NC工作機械は、金属の不要な部分を削り落とし、目的のカタチに仕上げる金属加工機械です。
自動車や航空機の部品をはじめ、金型や電子部品の加工など、 あらゆるものづくり産業の基盤 となっています。
サーボモータ
サーボモータとは、サーボ機構を用いて位置や速度などを制御する装置です。
ファクトリーオートメーション(FA)分野では、ロボットに内蔵され、送られてくる指令に応じて、決められた位置や速度、回転力(トルク)などを制御すます。
アクチュエータ
アクチュエータは、コンピュータから送られてくる電機信号を、物理的運動に変換し制御する装置です。
電気や空気圧、油圧などのエネルギーを機械的な動きに変換することで、機器を正確に駆動させる仕組みです。
センサ
センサとは、対象となる物質の情報を、物理的、科学的な現象を用いて収集し、電機信号やデータに変換して出力する装置です。
ファクトリーオートメーション(FA)で使われるセンサの種類
具体的に、工場で使用する一般的なセンサにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
光電センサ
センサの投稿部から発射した光を受光部で受け、反射する光の量や変化によって、物体の有無や表面の状態を検知します。
光電センサの種類には、物体により透過する光で検出する「透過形」、物体によりさえぎられて反射する光で検出する「回帰反射型」、物体により拡散・反射する光で検出する「拡散反射型」があります。
近接センサ
近接センサの種類には、「物体に近づくことで、電磁誘導により物質に発生する過電流で検出する方式」「物質の電気的な容量の変化で検出する方式」「リードスイッチや磁石を利用する方式」があります。
ファイバセンサ
レーザセンサ
レーザセンサには、用途によって多くの種類があります。
その中でも一般的なレーザセンサ受光量判別型は、レーザ(発光素子)の直進性を利用し、受光器で受光した受光素子により検出する方法で、スポットが目視できるため、光軸や検出位置の調整が容易にできることが特徴です。
投光器と受光器の構造により、「反射型」「透過型」「回帰反射型」などの種類があります。
接触式変位センサ
センサはスピンドルと物体に触れる接触子で構成され、物体に接触した時のスピンドルの移動によって、ワークの高さや厚み、反りなどを検出します。
超音波センサ
超音波の発信から受信までに要した時間と音速を演算することで距離を算出します。
また、送波器と受派器を物体が通過することで生じる超音波の量で物体の有無を検出する「透過形」もあります。
画像判別センサ
画像判別センサの特徴は、1台で多くの点を検出できることで、形の違いだけでなく色の違いなどを同時に判別することが可能なこと。
また、精密性が高く、対象物の動きにばらつきがあっても正確に検出することができます。
ファクトリーオートメーション(FA)に欠かせない産業用ロボット
一般的には、「3軸以上の自由度があり、プログラムにより自動制御可能なマニピュレーション(多関節構造とサーボモーターによって動作する)機能や移動機能を有する産業機械」をいいます。
「溶接ロボット」「組み立てロボット」「搬送ロボット」「塗装ロボット」「検査ロボット」など、さまざまな用途により分類されています。
ものづくりの製造現場で活躍しているロボット が「産業用ロボット」です。
産業用ロボットは、「組立」「搬送」「溶接」「検査」「洗浄」など、いろいろな用途で活用されていますが、NC工作機械との連携にも注目が集まっています。
ロボットアーム
産業用ロボットアームには、いくつかの型があり、それぞれの特徴に合わせて、目的の作業に適したものを選定します。
スカラ(水平多関節)ロボット
そのほかに、3軸に加えて手首部分にも水平の回転軸を持たせた4軸タイプもあります。
水平方向への柔軟な動きや垂直方向への変形が少ないことが特徴で、部品の押し込みや抑えなどの組み立て作業に適しています。
直交ロボット
直線的な動作なので、ブレによる誤動作がしにくく、高精度な作業に適しています。
また、シンプルな構造なので設計がしやすく、汎用性が高いロボットなので、多関節ロボットと組み合わせてシステムを構築することで応用の幅が広がります。
パラレルリンクロボット
アームの先端に吸着ユニットを装着することで、高速で流れるベルトコンベア上のワークを吸い上げ、素早い動作でピックアップして搬送します。
ファクトリーオートメーション(FA)の未来とスマートファクトリーについて
「インダストリー4.0」は、第4次産業革命と呼ばれ製造業の高度化を目指し、ドイツ政府が提唱する国家プロジェクト。
将来的な製造プロセスとIoT・AIなど先端テクノロジーを一体化させることで、メーカー工場内の製造システムイノベーションを推進するものです。
スマートファクトリーは、FA機器の稼働状況をネットワークで制御および自動化し、作業工程を効率化。さらに、部材や部品の調達から製品完成までのサプライチェーンを構成し、全ての工場をネットワーク化・最適化することで、インダストリー4.0を具現化するシステムです。
スマートファクトリー (Smart Factory) とは、ドイツ政府が提唱するインダストリー4.0を具現化した形の先進的な工場のことを指す。
スマートファクトリーのメリット
スマートファクトリーには、業務の効率化や人による業務を低減することによるコスト削減のほかにも多くのメリットがあります。
具体的には、工場全体をひと目で把握できる情報の共有です。
工場内ネットワークによって、FA機器の稼働状況を監視し、生産性の低い作業を見直すことで、工程全体を最適化することが可能になります。
また、工場全体のエネルギー管理システム(FEMS)によって省エネルギー化、つまりエネルギーの最適化にもつながります。
<主なメリット>
- 業務の効率化とコスト削減
- ネットワーク構築による工場稼働状況の把握と最適化
- エネルギー管理システム(FEMS)による工場の省エネルギー化
- サプライチェーンによる部品から製品までの一元管理 …など
スマートファクトリーのデメリット
一方、スマートファクトリーの実現には、大規模な工場の設備投資などの負担も多くあります。
工場の自動化を可能にするためには、FA機器の導入やそれらを管理するシステムを構築するための莫大な費用の負担。
初期投資のほかにも、それらを扱う社員の教育にかかる費用もあり、これらのコスト面が1番のデメリットといえます。
<主なデメリット>
- 機器やシステム導入のための初期投資の負担
- 機械やシステムを操作するための社員教育の期間やコストの発生
- 設備の定期的なメンテナンスや更新などにかかる人員確保 …など
メンテナンスマニュアルの作成や管理など、メンテンス専門の新たな人員確保が必要です。
FAについてまとめ
これまでみてきたように、ファクトリーオートメーション(FA)の実現には、設備投資のほかにも工場に適した設備や機械、それを扱う人の知識や技術など、今までにはない専門性などが大きなハードルです。
しかし、大量生産など高い生産性と製品の精密化に対応するために、ファクトリーオートメーション(FA)化は避けることのできない流れといえます。
今後ますます進む少子高齢化の対策も、企業にとって大きな課題です。